バイク事故
このステンレスプレートとボルト(22g)は、一年半私の左腕の中にあった。
2004年の春、テガララン村の坂道で転倒し、放り出された体を支えようとして左手首を骨折した。
とりあえずワルン(よろず屋)のベンチに座り水を一杯いただく。ザワザワと村人が集まってきて、マフラーが曲がったバイクを起こしてくれ、吹っ飛んだカメラを拾ってくれた人にお礼を言う。左顔面も強打した様で腫れ上がっている。蒸し暑い日だったのでヘルメットはハンドルに引っかけたままだった。力が入らない左手をダランとハンドルに乗せ、右手だけで慎重に運転し、なんとか宿まで帰ってきた。
幸運にも、デンパサールから戻ったばかりのYさんの車で隣村へ行きレントゲンを撮ると、きれいに折れていて、脱臼かな?という私の希望はあえなく消え去った。そのままデンパサールの病院に直行し、即入院・手術となる。Yさんが信頼できる外科医の出張オペを依頼し、テキパキと事を進めて下さったおかげで安心して手術を受けることができた。全身麻酔で知らぬ間に眠り、寒くて目覚めると隣でドクターが携帯電話で楽しく会話している。Yさんが「もう終わったよ」と声を掛けてくれた。
翌朝、日の出前の病院の外でコーランが流れるのを聴いたとき、様々な幸運に感謝した。その後バリの知り合いの方々が交代で見舞いに来てくれ、三日目には退院。そこでもYさんは病院側にかけ合って、なんと手術費を値切った!(値引き交渉は市場だけではなかった)
帰国して一年半後、K病院でこれを取り出すための再手術を受けた。施術前に言われたことは、「切開して、もしネジが埋め込み式であった場合、取り出すことができませんので…」と確認し、最新鋭の機械が並ぶ明るい手術室で、左腕のブロック麻酔だけで手術が始まった。「大丈夫、取り外せますよ。」とドクターの声にホッとする。「このプレートはおみやげに差し上げますね。それにしても太いネジだなあ。多分、欧米人用のでしょう。でも繋ぎ具合から診て、いいドクターに手術を受けたようですね」と担当医の説明。
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