蟲の王国
バリ島は虫が多い。気候が良いのと、田や畑での薬剤散布が少ないからだろう。
かって10年借りていた家も、様々な虫軍団の攻撃に遭った。元々昆虫少年だったので逃げ出すことはなかったが、ある日、部屋の壁に行列を作る蟻の行き先を辿ってみると、ビニールの中に仕舞ったシャツへと続いている。ベランダに持ち出し恐る恐る開けてみると、袖の中から土に混じって無数の白い卵がこぼれ落ちた。彼等は外からせっせと土を運び込み、巣を作っていたというわけ。
せわしく出入りを繰り返している蜂の行き先を追ってみれば、壊れたハンガーのパイプの穴にこれ又せっせと土を詰めている。
台所で調理していて、サソリを踏みそうになったこともあるが、バリのサソリの毒はそれほど強力ではないらしい。しかしなんとも厄介なのが「ヌカカ」だ。これは「糠の粉のように小さな蚊」という意味で1ミリ以下と小さく、気がつかない内に柔らかいところを刺される。瞼、耳朶を刺されても羽音に気づかず、しばらくして痒みと腫れが始まり、一週間以上続く。帰国後も風呂で体が温まると痒みがもどってくる。
自然に囲まれた生活、ということは、この地球上で最多種の昆虫類ともいっしょに暮らすということで、他の動植物も昆虫との連鎖でその多様化が維持されているのだ。
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